L’Alba dei Popoli, Otranto(新年のカウントダウン・コンサート in オートラント)
テーマ:音楽コンサート, 年越しイベント
開催地: Otranto
開催日: 大晦日
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イタリアの年越しといえば、気のおけない仲間たちとのホームパーティー、あるいはコンサートへ出かけるというのが定番ですが、ここオートラントで開かれる年越しコンサートは、ちょっと特別なイベントといえるでしょう☆
サレント地方の都レッチェから南東へ45km、アドリア海に面した美しい港町オートラントは、イタリアの国土の最東端の街。つまり“イタリアで一番最初に初日の出を迎えることができる”という意味をもった街でもあります♪ しかしオートラントがとくべつなワケは、なにもそれだけではありません。イタリア半島の最東端という立地から、オートラントはイタリアのみならず地中海の歴史のなかで大きな役割を果たしてきました。
オートラント海峡をはさみ目と鼻の先にあるギリシャから、アドリア海を越えてやってきた古代の冒険者たちがオートラントの街を建設したのが三千年前。ローマ帝国時代には東方世界への玄関港として、つづくビザンツ帝国時代には西ヨーロッパと都コンスタンティノープルを結ぶ東西のかけ橋として、オートラントはいつの世にも、地中海世界における文化・経済・政治の一大拠点として栄えてきたのです。中世には黒海から北アフリカさらにイベリア半島にまで至る地中海世界全域から学生が集うヨーロッパ史上初の「大学」がこの地にあり、膨大な量の古代ギリシャの書物をラテン語へと翻訳するなど、ルネッサンスや後世のヨーロッパの学問の発展に大きく寄与しました。サレント地方が、19世紀まで“オートラントの地(伊:Terra d’Otranto)”という名で呼ばれていたことからも、オートラントの街の重要さがしのばれます。しかし15世紀末、イタリア半島へ東の超大国オスマントルコ帝国が突如として侵攻を開始。真っ先にその標的となったのがオートラントでした。オートラントは壊滅的な打撃を受け、以来5世紀にわたり斜陽の時を過ごすことになります。21世紀の現在、まるで時が止まったままのような街並みと海が美しいオートラントは、人気観光地として世界中から大勢の人々が訪れます。
さらにユネスコは、オスマントルコの襲来により一夜にして繁栄を失ったこのオートラントの悲劇を人類の記憶にとどめるべく、オートラントを“異文化間の平和のための歴史の証人遺産(Heritage witness for peace of culture)”に認定しています。
そんなオートラントの街でどこよりも早く初日の出を迎えようという人々が、イタリア各地から集います。年越しコンサートは、オートラント港前の特設野外ステージで開かれます。冬でもそれほど寒くならないサレントだからこそ可能な海辺でのコンサートといえるかも知れません。もし風がふいたとしても、すぐ隣にそびえるオートラントの威風堂々とした城壁が、風よけとなりしっかり守ってくれることでしょう。
これまでこの年越しコンサートに参加したアーティストたちの中には、Goran Bregovic, Franco Battiato, Eugenio Bennato, Edoardo Bennato, Vinicio Capossela, Nicola Piovani, Lou Reed, Pino Daniele, Mario Biondi, Roy Paciなどそうそうたる顔ぶれが☆ さらには、カンヌ映画祭で最優秀監督賞の受賞歴があるEmir Kusturicaはじめ、Ferzan Ozpetekや Manuel Pradalなど世界的に名を馳せた映画監督たちも舞台監督、総合演出としてこのコンサートに参加してきました。大晦日の夜も更け、コンサートの熱気が最高潮を迎えるころ、ステージと聴衆が一緒になりカウントダウンが始まります。そして日付が変わり午前0時になると同時に、盛大に花火が打ち上げられ、その轟音と人々の大歓声がオートラントの港と街に響き渡ります。
元旦の明け方近くになると、初日の出を迎えるために大勢の人々が、オートラント郊外にあるパラシア岬(Punta Palascia)へと向かいます。雄大なアドリア海を望む灯台が、白い石灰岩の崖の上にそびえるパラシア岬は、たいへん風光明媚な場所で、オートラントの東端にあるということはつまり、正真正銘“イタリア東端の地”。このパラシアの灯台は、歴史的また地理的な重要度がきわめて高いため、なんと欧州全体でわずか5基しかない、直接EUによって維持管理されている灯台の一つなのです。ここからは運がよければ、アドリア海の対岸アルバニアの雪をかぶった山脈の峰々が、初日の出に照らされる様を望めるかもしれません♪
アドリア海に昇る初日の出という神々しいまでに圧倒的なスケールの大自然を、ぜひプーリア州の現地で味わってみてください。サレントでの年越しは、きっと一生の宝物となることでしょう…♪